設計について     


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□設計について

建築の設計とはおもしろいものです。クライアント(施主)、設計者、敷地、この3つのうち、どれかが違うと建築もまったく違ったものになってしまいます。

以前、防波堤などの設計をしていたことがありますが、設計者が違っても、その場所にできる防波堤は全く同一のものになってしまうのです。まず、海の 中の地形と沖合での過去の波の大きさの実績などから波の大きさを算定し、それに耐えうる一番経済的な形状の防波堤の大きさを導きだすのです。それは全て、 方程式から導き出される答えと同じくまったく同じ形状になってしまうのです。当然のことながらコンピューターでの設計が簡単に実現可能であり、かつ正確なのです。

ところが、建築の場合、クライアント(施主)、設計者、敷地のどれかがかわると、同じものができることはあり得ないといっていいくらいです。それこそ、同じ条件であったとしても、三者が出会う日が1日でも違っていれば、違う建築になってしまうことだって充分に考えられます。また、同じ条件であって も、設計者の雇っているスタッフが違っただけでも違う建築になることでしょう。この違いこそが、建築の設計がおもしろく、また難しいところでもあります。 とてもコンピューターのデータと計算だけでできるものではないのです。(気持ちがいいと感じる条件は人によって違うのですから、その違いをコンピュー ターに教え込むなんてとんでもないことです。)
ですから、この3者の出会いはとても重要ですし相性が悪いと感じたら思いきって他の設計者をさがしたほうがお互いのためだと思います。

また、設計においては時間も重要なファクターだと考えます。「気持ちの良さ」ひとつをとっても、設計者とクライアントがたがいにそれを共有できるようになるにはある程度の時間が必要だと思うのです。また、ほとんどのクライアントは縮小された図面から、立体とくに原寸大のものをを思い浮かべることに慣 れていません。それどころか、平面図の見方すらわからないはずです。それまで必要のないことですからわからなくて当然です。(設計者だって確実にはわから ないのですから・・・。だからこそ模型をつくったり透視図を書いたりして設計者自身も検証するのです。)私の経験では、クライアントが図面になれるまでに 早くても2〜3ヶ月近くかかるように感じています。だからこそ、短期間での設計はとても危険だと思っています。

住宅などとくにそうですが、一生のうちでも大きな買い物の一つです。折角の買い物ですから充分に吟味することを「楽しみ」にしてほしいと思います。 同じお金を使うのであれば、できるだけ長く楽しめるほうが得した気分にもなれると思いますし、一所懸命考えた分だけ、建築ができあがっていくときのワクワク 感は大きいものになります。とにかく時間を確保して、それを一緒に楽しんでくれそうな設計者をさがすことからはじめることをお勧めします。