初めての「いい椅子」体験:バーテブラ・チェア     


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 その当時、腰の調子がおかしかったのです。バイクで通勤していたし、ジェットスキーをレンタルで借りて遊んだりと、結構、腰に負担がかかりそうなことばかりやっていました。

 そんなとき、親しい設計事務所に遊びに行き、いろいろな話をしていたのです。
その設計事務所を主宰しているKさんは家具を創りたくて設計をやってると言ってるくらいで、家具にとても詳しい方だったのですが、「近頃、腰が痛くて」という話になったら、どんな椅子を使っているのか質問されました。
で、その当時、勤務先の事務所で使用していた椅子の説明をすると、椅子を換えてみたらとアドバイスをされたのです。
そして、試しにKさんの使用中の椅子に座らせていただいたのですが、これがとても具合がいいのです。なるほど、椅子でこんなに違うのかとおもい話を聞いてみると、椅子の造りももちろん違うけど、座面の高さもかなり重要だと教わったのです。
その椅子はイトーキが販売している「バーテブラ・チェア」という椅子でした。しっかりした事務用の椅子で36センチまで低くできる椅子はこれくらいしかないからというのが「バーテブラ・チェア」を選んだ理由のひとつだったそうです。

それまで、椅子の違いを感じた体験は、知り合いが乗っていた「VWゴルフ」や「アウディ80」などの車に乗せてもらったとき、国産車のシートとのあまりの違いに驚いたときくらい。でも、そんな体験がありながらも、事務所の椅子の善し悪しなんて考えたこともありませんでした。

しかし、「バーテブラ・チェア」を体験してしまっては、もう元の椅子にはもどれない。
所長に相談し、腰の調子がおかしいからとの理由で、自前の椅子を持ち込むことを許可してもらい、早速注文してしまったのでした。それまでの僕には椅子に「6万円」を投資するなんて、考えられなかったことです。

そして、「バーテブラ・チェア」を使い始めてしばらくすると、腰の調子が少しずつ、よくなっていったのでした。
そのとき初めて、椅子の重要さを知り、それがきっかけで椅子に興味を持ってしまったのでした。

その後、1年以上経って、勤務先の事務所に出入りしていた友人が「バーテブラ・チェア」に興味をもち1台注文したのですが、事情がありキャンセル。事務所まで入荷していた「バーテブラ・チェア」は行き先をなくし、見かねた所長が引き取ってくれることになりました。で、所長がしばらく使ってみて、それまでの椅子との違いに驚き、「設計は身体が大切だから、スタッフの椅子もすべてバーテブラ・チェアにかえるぞ。三浦の使っている椅子も事務所で買い取るから」ということで、なかよくみんなで「バーテブラ・チェア」を使うことになったのでした。

ということで、僕のはじめての「いい椅子」は無事?事務所の備品になってしまい、今は手元にありません。

考えてみれば、設計事務所の場合、1日の半分を椅子の上で過ごします。(残業ばかりですからね)
40年働くとすれば、一生のうちの1/4は事務所の椅子の上での生活です。この時間を大切にしようと思えば、椅子への数万円の投資はとても安いものに思えてならないのです。そんな考えにいたった僕が独立を機に手に入れた椅子がその当時発売されたばかりの「アーロンチェア」。そのころは雑誌にも取り上げられてなく、とてもめずらしかったので、事務所に来た人がみんな驚いていました。この椅子の話は後日・・・。